インプラント
インプラント
歯を喪失した部位の補綴修復治療法として、ブリッジ、入れ歯、そしてインプラントがあります。
インプラントとは?
歯科医療におけるインプラントとは、歯を喪失した顎の骨に人工の歯根(インプラント)を埋入し、歯を補う治療法です。
インプラントの構造
インプラントは基本的には、あごの骨の中に埋め込まれる歯根部(フィクスチャー)、インプラント体の上に取り付けられる支台部(アバットメント)、歯の部分に相当する人工歯(上部構造)の3つのパーツから構成されています。
フィクスチャー、アバットメントの材質は生体親和性の高いチタンまたはチタン合金で、上部構造は、セラミック、レジンなどがあります。
メリットとデメリット
●メリット
- 入れ歯のように浮き上がりや沈み込み、横揺れがなく、力強く噛むことができる
- 残存する自身の歯を支台にしないので、歯への荷重負担がかからない
- 自身の歯を削ることがない
- 人工歯根上に歯冠を着けるので審美性に優れる
- 入れ歯のようなプレートがないので発音への支障が少ない
- 人工歯根部は顎の骨に密着しているので良好な噛み合わせを維持することができる
●デメリット
- 外科的手術が必要
- 顎の骨の状態によっては数カ月~数年の治療期間を要する
- 健康状態などにより手術を出来ない場合がある
- 保険が適用されず、費用がかさむ
- 自身の歯と同じく、装着後清掃状態が悪いとインプラント周囲炎を生じることがある
他の治療法との違い
ブリッジ
【治療法】
歯を喪失した部位に隣在する歯に人工歯冠を被せ、歯冠・欠損部ダミーが連続した人工歯冠を歯に装着する方法。
【メリット】
- ある程度自分の歯と同じように噛むことができる
- 固定式であるため、ほとんど装着感な使用することができる
- 保険適用の場合は費用を抑えることができる
【デメリット】
- 欠損隣在に健康な歯がない場合や、多くの歯を失った場合は処置できない
- 支台となる歯を削るために歯質や神経に負担がかかる
- 支台となる歯に欠損部人工歯に加わる咬合力を分担させるため歯への負荷が高まる
- 歯肉との間に歯垢が残りやすく、口の中が不衛生になりやすい
入れ歯
【治療法】
歯を喪失した部位に人工歯が付いたプレート装着し、欠損部を補う方法。取り外しが可能。
【メリット】
- 多数歯の欠損に適している
- 取り外しができるので手入れがしやすい
- 外科処置が無い
- 保険適用の場合は費用を抑えることができる
【デメリット】
- 取り外して手入れをしなければならない
- プレートが粘膜を被覆するため異物感がある
- 入れ歯を支える骨や歯へ負荷が加わり、歯の動揺や顎の吸収を生じる
- 入れ歯と歯の間、プレートの内面に食べ物が入り込み口の中が不衛生になりやすい
こんな方にお勧めします
●健康な歯を削りたくない方
ブリッジのように欠損に隣接する歯を削ることがありません。審美性に優れ、健康な歯へ負担をかけない治療ができます。
●入れ歯がしっくりこない方
部分入れ歯では欠損に隣接する歯に金属のバネを掛けるので、それ自体が違和感の原因になります。インプラントは歯が抜け落ちた部分へ、人工歯根であるインプラントを埋め込みます。金具なく隣接する歯へ影響せず、違和感なく自分の歯のように噛めます。
●入れ歯が動く方
インプラント併用入れ歯では、インプラントが入れ歯をしっかり留めるので、外れや横揺れが激減して、噛める食品が増え、しっかり咀嚼することができます。
インプラント治療の流れ
【STEP1】初診・診察・検査
口腔内の状態を診察、検査し、インプラント治療を適用できるか判断します。
【STEP2】治療計画立案、検討
各種検査に基づき、治療計画を立案します。
患者さんに説明、相談し、治療方法を決定します。
【STEP3】一次手術
麻酔をしたうえで、歯肉粘膜を切開して顎の骨に穴を開け、フィクスチャーを埋め込みます。
【STEP4】治癒期間
人工歯根と顎の骨が十分に結合するまで、数ヶ月の治癒期間を設けます。
※期間には個人差があります。
【STEP5】二次手術
人工歯根と顎の骨が結合した後、再び歯肉粘膜を切開し、人工歯根と人工歯をつなぐための部品(アパットメント)を連結します。
【STEP6】上部構造(人工歯)の装着
セラミック等で製作した人工歯をアパットメントに装着してインプラントの完了となります。
【STEP7】メンテナンス
インプラントは人工的な素材なのでむし歯になることはありません。しかし、インプラントを取り囲む歯肉や顎の骨は自分のものです。そのため、衛生状態が悪いと歯周病と同様の症状(インプラント周囲炎)を起こし、インプラントが脱落してしまうことがあります。
インプラントはメンテナンス次第で長期間使用できるものです。日常の歯磨きはもちろん、定期検診にて異常を早期に発見します。
インプラントを長期的に維持させるためには、自分自身の歯と同じく、定期的なメンテナンスが重要です。
「あごの骨の量が足りない」と言われた方へ
「あごの骨の量が足りない」と言われ、インプラントができない場合もあります。実際、インプラントを埋め込む骨が十分にない場合、装着することは不可能です。
ただし、増骨手術を行うことによって、インプラントの装着が可能となる場合もあります。増骨手術は患者さまの状態などによって、いくつか方法があります。
実際に手術が可能かどうかは、検査をしたうえで判断します。ご相談ください。
増骨手術の種類
サイナスリフト
上顎の骨の厚さが5ミリ以下の場合に適応となる治療法です。
サイナスリフトは歯茎の頬側の部分を切開、骨を開窓して、上顎洞底粘膜を挙上し、できたスペース部分に骨補填剤を入れ、骨の再生を促す治療法です。
ソケットリフト
上顎の骨の厚さが4~5ミリ以上の場合に適応となる治療法です。
上顎洞底粘膜を、インプラント埋入部位の顎の骨の部分から挙上し、できたスペースに骨補填剤を入れ、骨の再生を促す治療法です。
ソケットリストはサイナスリフトと異なり、インプラント手術と同時に行えることがあり、身体的な負担を軽減できるケースもあります。
GBR法
顎の骨の高さや厚みが足りないときに行う治療法です。
インプラント体を埋め込んだ露出面に人工的な骨の代わりになる材料や自身の骨を骨が不足している部分に置いていきます。その上から人工膜で覆い、ピンで固定して骨が再生するまで4~6か月程度待ちます。
インプラントとしっかりと固定したのを確認してから、人工歯をつけていきます。
いずれの治療法についても、患者さまの状態を詳しく検査した上で骨再生が可能かどうか担当医師が判断いたします。