入れ歯治療
日本補綴歯科学会補綴専門医による監修
むし歯などが原因で、一部あるいはすべてをなくした歯の代わりとして、もっとも一般的なのが「入れ歯(義歯)治療」です。歯のない部分に入れ歯を装着することで、咀嚼(そしゃく)機能など歯本来の機能を取り戻します。
現在では「入れ歯がズレてしまう」「入れ歯が当たって痛い」という入れ歯自体の問題を解決するものから、発声や食事を楽しめるように見た目が自然な入れ歯まで、幅広いタイプが開発されています。
保険診療の入れ歯と自費診療の入れ歯
入れ歯には、保険が適用するものと、しないものがあります。お口に合わない入れ歯を使っていると、ずれたり外れて痛みが出ることがあります。患者さん一人ひとりのお口にフィットした入れ歯を選び、快適な食生活を送りましょう。
保険診療の入れ歯
●素材
レジンのみで、選択肢はありません。
●メリット
費用が安く済みます。また、素材の性質上、修理をするのが容易です。
●デメリット
人工的な歯だとわかってしまうことがあります。厚みがあるため、食べ物の温度や味覚が感じにくくなります。口の中に異物感があり、発音しにくくなります。
自費診療の入れ歯
●素材
セラミックや金属の他、さまざまな素材が選択できます。
●メリット
ずれたり外れにくく噛み心地がいい。また、口の中の異物感がありません。食べ物の温度や味覚を感じやすいため、食事を楽しめます。
●デメリット
保険が適用しないので、費用が高くなります。修理するのに時間がかかることがあります。
入れ歯の種類
入れ歯には「総入れ歯」と「部分入れ歯」の2種類があります。
総入れ歯
すべての歯がない場合に使用します。自分の歯が1本もないため初めのうちは違和感がありますが、歯科医院の定期的なメンテナンスで次第に慣れます。
●レジン床
保険が適用する入れ歯です。レジンという歯科用プラスチックで歯肉に触れる部分ができています。患者さんによっては違和感がある場合があります。金属床の入れ歯よりも熱伝導率が低いので、食べ物の温度を感じづらくなることがあります。
●金属床
自費診療です。違和感がほとんどなく、歯肉に触れる部分はレジンよりも薄い金属製の素材でできています。薄さと強度を併せもち、床に落としてしまっても割れる心配がありません。また、熱伝導率が高いので、食べ物の温度が感じやすく美味しく食事を摂れます。
部分入れ歯
部分入れ歯は、何本かの連続した歯が抜けてしまった場合に使用します。一般には、残っている歯にバネを引っかけて固定します。そのため、健康な歯に負担がかかることがあります。
●ノンメタルクラスプデンチャー
保険診療で部分入れ歯を作ると、バネや留め具などの金属があるためにどうしても見た目がよくないことが気になる患者さんがいらっしゃいます。しかし、ノンメタルクラスプデンチャーは義歯を支える部分にプラスチック製の部品を使うため、見た目がきれいなのが特徴です。義歯床という義歯の支えの部分が歯肉と同化するため、外から入れ歯だと気づきにくいメリットがあります。
●アタッチメント義歯
自費診療ですが、目立ちにくくしっかり噛むことができます。装着感がよくぐらつかないのが特徴です。金属製のバネで入れ歯を支えるのではなく、精密な装置や小さな強力磁石を使用しているので、取り外しが簡単です。